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2024年2月より、当院で経皮的左心耳閉鎖術が施行可能となりました。

 

心房細動と脳卒中(心原性脳塞栓症)

心房細動とは、心臓の中にある「心房」という部屋が不規則に拍動する不整脈です。
本邦における有病率は0.6%程度ですが、加齢に伴い有病率は上昇し、80歳以上では2.8%(男性3.5%、女性 2.5%)と報告されています。
心房細動は動悸や頻脈、あるいは徐脈などの症状を起こしたり、心不全の原因になるという問題がありますが、同時に、心房内の血液の流れを滞留させてしまうことで、心房の中に血液の塊(血栓)が出来やすくなってしまうという問題があります。
血栓が形成されると、時として血液と共に心臓から送り出され、他の臓器へと血栓が流れていってしまうこと(これを血栓塞栓症といいます)があります。
心房由来の血栓塞栓症で最も問題となる臓器は脳です。脳血管に血栓が詰まると、詰まった先の脳の組織への血流が遮断され、脳梗塞を生じます。脳梗塞は死亡や、重大な後遺症(麻痺、失語、感覚障害など)を引き起こす可能性が高く、その後の患者様の生活の質を著しく悪化させてしまいます。
よって、心房細動をお持ちの患者様は、脳梗塞を予防するため、血液を固まりにくくするお薬(抗凝固薬)を内服する必要があります。

 

左心耳閉鎖術とは

心房細動に伴う血栓の多く(90%以上)は、左心房という部屋にある袋状の「左心耳」という部位に形成されます。
この左心耳に血液が流入しないよう左心耳自体を閉鎖してしまう治療があります。これを「左心耳閉鎖術」と言います。
左心耳閉鎖術は従来手術で行われており、その多くは、他の開胸手術を行う際に、合併手術として行われていました。
最近では胸腔鏡というカメラを用いることで、大きな傷を作らずとも胸壁にいくつかの穴を開けるだけで施行可能な胸腔鏡下左心耳閉鎖術という方法も普及してきています(Wolf-Ohtsuka法といい、これは当院心臓血管外科でも施行可能です)。

これら外科手術よりさらに低侵襲な方法が、左心耳を閉鎖できる「閉鎖栓」をカテーテルという管を介して左心耳に持ち込み留置する「経皮的左心耳閉鎖術」です。
これを行うことで、心房細動の患者様でも抗凝固療法を中止することが可能となり、出血合併症のリスクを下げることができるようになります。

 

経皮的左心耳閉鎖術の概要

経皮的左心耳閉鎖術では、全身麻酔下で大腿部の静脈を穿刺し、5mmくらいの太さの管(カテーテル)を挿入します。
大静脈から右心房へ、さらに右心房と左心房の間の壁(心房中隔)を穿刺することで左心房内へとカテーテルを進め、そのカテーテル内から閉鎖栓を折り畳んだ状態で左心耳内に挿入し、展開、留置します。

適切な位置に正しく留置するため、血管造影装置と経食道心エコーという複数の画像検査装置を駆使しながら確認し、手技を行なっています。治療にかかる時間は1時間程度です。
治療後は翌日から歩行可能となり、術後2日で退院可能です。術後45日以降に再評価を行い、閉鎖栓が問題なく機能していることが確認できれば、最終的に抗凝固療法を中止することが可能となります。

 

経皮的左心耳閉鎖術の概要

非弁膜症性心房細動で長期的な抗凝固療法が推奨される患者様のうち、
①抗凝固療法を長期間実施できない医学的に妥当な理由(過去に輸血を要する出血や頭蓋内出血の歴がある、抗血小板薬の併用が長期に渡り必要、転倒に伴う外傷の歴が複数回ある、びまん性脳アミロイド血管症の既往がある、HAS-BLED score3、など)がある方で、
②短期間であれば抗凝固薬の服用が可能な方が対象となります。

 

地域の先生方へ

非弁膜症性心房細動で抗凝固療法を継続中の患者様で、出血イベントなどでお困りの患者様は決して少なくないと思います。
また、今のところは出血イベントを生じていなくても潜在的な出血リスクを抱えた患者様も意外に多いのではないでしょうか。
これらの患者様にとって、福音となりうる治療かと思います。適応の判断含め、いつでも気軽にご紹介ください。

 

担当医
  • 伊藤 之康(循環器内科)
     外来:毎週水曜日 14:0016:30/毎週木曜日 9:0011:30
  • 花澤 康司(不整脈科)
     外来:毎週月曜日 9:0016:30/第一土曜日 9:0011:30
社会医療法人渡邊高記念会 西宮渡辺心臓脳・血管センター
〒662-0911 西宮市池田町3番25号
電話:0798-36-1880

 

 

 

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